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老化抑制物質

生物の種類により寿命に大きな差がある。その原因は心臓の鼓動回数に約20億回と限界があるからだという仮説がある。体の大きい動物ほど心拍数がゆっくりになって長く生きるというのだ。 ハムスターの寿命は2~3年程度で心拍数が約400回/分であり、像の寿命は約70年で心拍数が約25回/分、クジラでは100~200年も寿命があり心拍数は約8回/分である。人類に近縁な類人猿であるサル、ゴリラ、チンパンジーの寿命はおよそ30年、心拍数200回/分である。 人間の心拍数は60回~100回/分なので、心臓の鼓動回数と寿命の関係だけを考えると本来の人間の寿命は40から50年ぐらいなります。しかし実際には、最近の人間の平均寿命をみると80歳程度まで生きることができる。これは哺乳類の心臓の鼓動回数の限界とよばれる20億回をはるかに超えています。 今から1万年ほど過去の縄文時代には人の寿命が30歳程度であったという説がある。当時は、10代で子供を出産して、その後は急速に老化が進み寿命を迎えたと考えられる。当時の人類は、癌や動脈硬化など生命を脅かす病気に罹りやすい体質を遺伝的にもっていた可能性がある。 つまり、人類は他の生物で類をみない速さで進化を遂げたのかもしれない。他の哺乳類と違い人類は高度な知能を持っているが故に、他の生物では見られない速さで長生きする仕組みを獲得していったのだ。 筆者は、哺乳類の寿命に関しては、心臓の心拍数の限界を自然死の基本的な要因として考えるよりも特に自覚症状がない循環器系障害が発生することで心臓を構成する心筋細胞を維持できなくなったり、種々の臓器障害をきたし、これが自然死の決定的な要因となっていると考えている。 現代社会では、たとえ食生活や医療の影響で平均寿命が延びているとはいえ、人類には他の哺乳類とは異なり長生きをすることを可能にする遺伝的な特別な仕組みが必ず存在すると考えられる。 進化による長寿化というという意味合いで考えれば、文明が進むにつれ20代、30代と早い段階で病弱になる人は子孫を残すことができず、進化論的に捉えてみれば長生きできない障害を抱えた人は自然淘汰されていったと考えるのが妥当だろう。 人類はその歴史の経過を通してより高い知能を身につける必要に迫られることで、次第に晩婚化せざるおえなくなり、子育てにもより多くの時間が必要になったと推測できる。 男性は結婚相手に女性の容姿を重視するが、多くの女性は将来において授かる子供のことを考えて、まず第一に学歴や収入を重視して結婚相手を選び、その他に体格が良かったり長身であり社交的であることも結婚相手の条件に含まれる場合が多い。知能が高さに比例して社会的地位や収入が高い傾向があり、一般的に人柄も社交的であったり親の収入や職業、家庭環境がよく心身共に健康な人が多いからだ。 とくに女性が男性を選ぶ権利をもつことができる世界になったことが人類の長寿化に大きく貢献したと思う。 現在でもたとえば家族性高 LDL コレステロール血症(両親の片方から遺伝子変異を受け継いだヘテロ接合体)は自覚症状がなくても比較的に早期の40代から50代に冠動脈疾患、脳梗塞などの生死にかかわる病気を発症する遺伝的リスクを持っており、この病気を罹患する集団が世界でおよそ300人に1人の割合存在することが知られている。 おそらく人類は僅か1万年という短い時間で、上記のような血中のLDLコレステロールの代謝機能を改善させただけでなく、先天的な遺伝変異を主要因とする癌、糖尿病、自己免疫疾患、中枢神経系疾患などの命に係わる病気を早期の年齢の段階で発症して死亡するリスクがある病弱な人を急速に減少させていったと考えられる。 実際には、人類は正常な免疫機能を長期間にわたり維持する仕組みや、複数の強力な抗酸化物質を体内で産生する能力など長寿化に有利に働く機能を獲得したと考えられる。 したがって現在の人類の多くは、60代以降の高齢者になるまで癌、循環器系障害、糖尿病など生活習慣病と呼ばれる病気にかかりにくい体質となったのだろう。 人類が平均寿命として80歳を超えてまで長生きして寿命を迎えることができるのは、心拍数の限界が伸びたことをその要因とするより、人類の歴史を通して遺伝的に寿命に係わる複数の機能が急速に改善したことに起因すると考えられる。 心臓を構成する心筋細胞や神経細胞は細胞分裂をしない固定性の分裂終了細胞である。これらの組織で細胞は年齢を重ねるごとに徐々に死滅していくが、生物の寿命を過ぎても多くの細胞は比較的に損傷が少ない状態のまま維持される。 しかし、加齢に伴って体を構成する全ての細胞は老化により確実に失われていくので、たとえ病死とならなくても、いずれ枯葉のごとく痩せ細り息絶える。自然の摂理として寿命が尽きて死ぬ運命から逃れられない。 これまでに地球上で最も長生きした人は122歳と記録されている。日本では115歳を超えた人は10人もいない。なのでたとえ長生きしても人間の寿命は生理的に120歳ぐらいが限界だと考えらる。 しかし高齢になって病気にならず老衰死する人もいれば、病気になり寿命を迎える人もいる。また病気にならずとも寿命は人により様々であり、長生きする人もしれば、早死にする人もいる。 消化管細胞、皮膚細胞や骨髄にある造血幹細胞などは生きている間に活発に細胞分裂を繰り返している。これらの細胞は、細胞分裂によるDNAのエラーの蓄積が起こる。また活発に分裂を繰り返す分裂細胞だけでなく、心筋細胞や神経細胞のような分裂終了細胞のいずれに対しても活性酸素やフリーラジカルなどの複数の環境因子によるDNAや蛋白質の異常が引き起こることから、そららの異常の蓄積は確率論的要素として人の寿命や老化関連疾患の発症に多分に関係している。 それとは別に、人間の体の中には老化関連疾患を発症し易くしたり寿命を向かえるよう指令を出す機構が遺伝的にもともと存在しているようだ。 最近の動物実験の結果から、NADと呼ばれる物質が加齢とともに減少すると、細胞核の損傷やミトコンドリアの活性低下が進むことが明らかになり、このNADの生合成に血液中にあるNAD合成系酵素「NAMPT」と呼ばれる蛋白質が重要な働きをしていることが分かった。 このNAMPT蛋白質を増やすことで老化関連疾患の発症を抑え、平均寿命を延ばす可能性がある。 またサーチュインと呼ばれる老化を抑制する機能をもつとされる蛋白質をコードする特定の遺伝子を活性化させれば、細胞の修復機能が高まり人間の寿命をある程度まで延ばすことができる可能性があることも分かってきた。 一方、人類を含めた生物が半永久に生き続ける為には、正常な細胞の細胞分裂の有限性を正常な状態のまま無限性に人為的に改変する必要が前提条件になるのは間違いない。

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